美容の世界もひとつの時代が終わり、令和とともに新しい幕開けが多方面で感じられた2019年上半期。「MAQUIA」8月号では、4人の美賢者がコスメのトレンドと進化を解説。美のプロが特に注目した新時代のスキンケアとは?
美容ジャーナリスト 齋藤 薫さんの
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“未来系ハイブリッド”
美容ジャーナリストの草分けとして、コスメの進化を世に広め、女性の美に貢献。数多くの媒体で美容記事、エッセイを執筆。
既存の概念にとらわれない
コスメが、令和と共に花開く
ファンデがスキンケアだったらいいのに……漠然とそう思っていても、こんなに突然、現実になるとは思わなかった。単に美肌成分配合のファンデではない。表がファンデ、裏がスキンケアといった本当の意味の一体ハイブリッド化。化粧品は進化するほど、万能力を持つようになっていく。しかも単なるオールインワンではない、肌にとって矛盾するものを1つにする快挙。それはまさに化粧品の未来そのものだ。急先鋒である資生堂HAKUはもちろん、ファンデを塗ると美白マスクとなるアルビオンのホワイトニスタも未来型ハイブリッドを謳っているし、UVなのに下地なのにリンクルケア、口紅なのにリップケア……と、ハイブリッド化はどんどん進んでる。
思えばマキアのデビューの頃、コエンザイムQ10などの美肌サプリブームに、顔筋マッサージ旋風など、“塗る化粧品”一辺倒ではない、様々な方法で総合的に効かせるエイジングケアがにわかに注目を浴びた。それから15年、既存のカテゴリーに全く囚われない先進コスメがじわじわと増え、令和と共に一気に花開いた形。“飲む全身エイジングケア”解禁や、吹き付ける人工皮膚完成など、化粧品に対し夢見ていたことが、いよいよリアルに形になる時代の始まりなのである。
美容エディター 安倍佐和子さんの
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“10年ぶりの美白有効成分、誕生”
スキンケアから医療まで、美にまつわる幅広い分野に精通。コスメテクノロジー開発の裏側にも詳しく、鋭い分析力が評判。
ポーラの偉業に業界騒然!
美白ケアの未来を占う「PCE-DP」
例年、美白ケア製品の最新情報が私たちに届くのは、前年のクリスマスシーズン。つまり2019年の美白レースは6カ月以上も前から始まっていたわけだが、プロとして正直に告白しよう。この時点で「10年ぶりの美白有効成分、誕生」のニュースが舞い込んでくるとは、誰も予想していなかったのが本当のところだ。世界でもっとも厳しいとも言われる日本の厚労省認可取得。近年、審査基準はより厳格化し、過去の歴史からも新規美白有効成分が早々に認可されるのはまったくもって想定外。だからこそ、ポーラ ホワイトショットLX・MXに配合の「PCE-DP」誕生が、美容の歴史を揺るがすほどのビッグニュースだということ、よくわかるはずだ。
美白有効成分と聞けば、メラニンに働きかけるものと思いがちだけど、この「PCE-DP」は、細胞の核を守るメラニンの役割を逆転の発想からアプローチ。メラニンに頼らずとも核を守れる強い表皮細胞へと育んでいこうというもので、まさに目から鱗。メラニンに依存せず美白ケアできる上、表皮細胞そのものの向上によって、美肌ケアまで大いに期待できるのだから。感じるのは、この「PCE-DP」誕生によって、美白ケア研究はひとつのターニングポイントを迎えたのではないかということ。いよいよ、美白ケアが「美白」という枠を超える時代へ? そんなことを予感させる10年ぶりの嬉しいニュースに、ひとり心を震わせている。
美容ジャーナリスト 小田ユイコさんの
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“『整えて消す』毛穴ケア新時代”
創刊時からMAQUIAの編集に携わる。美の専門家への取材に明け暮れ、キレイにまつわるネタを、マニアック目線で深掘り。
画期的ソリューション登場で毛穴しくじり時代に終焉
毛穴ケアで、かえって毛穴が目立ってしまうというジレンマ、実は美容のプロでも経験者は多い。その失敗の原因の多くが、角栓のケアに問題があった。爪で押し出したり、ゴマージュでゴリゴリこするなど、結果として毛穴をいじめてしまっていたのだ。2019年、そんなしくじりケアを終焉させるアイテムが登場。
メナードは、角栓に関する世界初の新知見を発表。古い角質と酸化した皮脂の混合と思われていた角栓が、実は「毛穴の奥」の内壁由来のタンパク質が分解されずに溜まったものであることを突き止めた。これをケアする成分で、根本から角栓をできづらくすることに成功。毛穴は「奥から整って」キュッと締まり、鼻まわりも頬も、凹みから解放された。すでに詰まってしまった角栓の、除去コスメも刷新。ルナソルのジェル洗顔に代表されるように、物理的に取り去る強硬手段でなく、角栓を分解して取り去るアイテムが登場。刺激を与えず、毛穴を潤し「整えながら洗い流す」ことに成功したのだ。長年、手ごわい敵だった毛穴を、嘘のように簡単に消せる時代に。毛穴の詰まり、凹みの影がないと、ここまで肌はツヤめくのか。長くこの仕事をしてきて、自分の肌に今、新鮮な感動を覚えている。
美容エディター 松本千登世さんの
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“『仕方なくUVケア』時代の完全終結”
使い手である女性の立場に立ったコスメジャッジは折り紙付き。美人の成り立ちを解き明かすプロファイリングに力を注ぐ。
「完璧」を「心地よく」。
未来の肌は、明るい!
振り返って改めて確信しました。スキンケアの中でも、UVケアほど使い手と創り手とが「切磋琢磨」しているジャンルはない、と。「紫外線の悪影響はシミだけじゃない」「赤外線もブルーライトも」「大気汚染からも守らなくちゃ」という創り手の飽くなき追求に、使い手は綺麗の可能性を見出してきたし、一方で、「重い」「べたつく」「白浮きする」という使い手の不満に対して、創り手はひとつひとつを見事にクリアし、それどころか「乾くのはいや」「綺麗に見せたい」という目的を超えるクオリティを叶えてきた……。互いにもっと先、もっと上と妥協なき「ラリー」を重ね、結果、驚くほどの進化を遂げてきた気がするのです。
そして、2019年上半期。「極み」を見せてくれたUVケアに、年齢も肌質も問わず、誰もが感動を覚えているはず。たとえば、SUQQUの極上美容液のような使い心地は、塗る行為そのものまで愛せるし、ランコムのほのピンクに染まる仕上がりは、生まれつきこんな肌ならいいのにと思わせる。完璧に守る、それでいて、肌も心も大満足。未来の美しさに希望を抱かせるクオリティに違いありません。「仕方なくUVケア」という時代は、完全に終結した、そう宣言したいのです。
MAQUIA8月号
撮影/大原敏政〈aosora〉 イラスト/瀧川裕恵 取材・文/小田ユイコ 構成/木下理恵(MAQUIA)
【MAQUIA8月号☆好評発売中】