大河ドラマでの好演も続き、確かな演技力で注目を集める南沙良さん。映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』では、ラップに救いを見いだしつつ孤独を抱える朴秀美を体現しています。インタビュー前編では、「羨ましさ」や「もどかしさ」と向き合う自身ならではのスタンスを語ってくれました。

南沙良 インタビュー ポートレート

南沙良

南沙良さん

2002年6月11日生まれ、東京都出身。2017年に映画『幼な子われらに生まれ』で俳優デビュー。翌年公開された初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で報知映画賞、ブルーリボン賞ほか数々の映画賞を受賞。主な代表作に、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)、『光る君へ』(2024年)、映画『女子高生に殺されたい』(2022年)、映画『愛されなくても別に』(2025年)など。今年2月、映画『禍禍女』の公開を控える。

不快な感情は、日記を書くことで整理し、消化する

南沙良 インタビュー アップ

——南さんが演じる朴秀美(ぼく・ひでみ)は、出口夏希さん演じる、充実した毎日を過ごす矢口美流紅(やぐち・みるく)を眩しく感じています。南さんは自分にはないものを持っている人を「いいな」と思うことはありますか?

南さん:たくさんあります。外見から、性格、言動などのパーソナルな部分まで、自分にはなくて人が持っているものって本当に輝いて見えるので。自分で決めてちゃんと行動に移せる人は、特にいいなぁ……と感じちゃう。ただ、年齢を重ねるにつれて、人を羨ましいと感じた時のもどかしさは、以前よりも穏やかになってきたように思います。

——そういった感情と、どのように向き合っていますか?

南さん:視せずに、丁寧に向き合うようにしています。不快な感情に蓋をしてしまうと、その時はラクだけれど、後々もっと苦しくなってしまうから。私は昔から書くことで感情を整理する癖がついているので、日記に書いて消化しています。

——朴秀美も美流紅もそれぞれ家族の悩みを抱えながら、人には共有できずにいます。南さんは、悩みを人に相談できますか?

南さん:いえ、相談するのは苦手で……一人で耐え忍びます(笑)。それこそ日記に書いて、それでもまだモヤモヤしていたら、考えるのをやめてボーッとする。無心でいるために壁などを見つめながら過ごして、眠くなるのを待ちます。悩んでいる時ってなかなか眠れないけど、しっかり寝ることが一番の解決法な気がするんです。

変わりたいという気持ちは、つねに持っている

南沙良 インタビュー 映画

——「現状を受け入れることが良きとされるなんて異常」、本作品ではそんな共通する思いをもとに、力を合わせて現状打破を目論みます。現状を変えることに躊躇している人は少なくないと感じますが、南さんはいかがですか?

南さん:と比べると、無鉄砲に何かに夢中になったりすることが難しくなったなとは思います。でも、昔から新しいことに挑戦したり、新しい環境に身を置いたりするのは好きなほうで。変わりたいという気持ちは、つねに持っているかもしれません。

——最近、新しく挑戦したことはありますか?

南さん:この映画は、最近で一番大きな挑戦でした。役も作品も今まで演じたことのないテイストだったので、新しいことができた達成感があって。思い切り役に没頭できたのは、本作のスタッフの皆さんのおかげです。「いい作品にしたい!」という共通意識を持ち、全力で取り組む方々ばかりで、映画を作る楽しみを改めて感じられた現場でした。

自分の気持ちに向き合うきっかけをもらえた

南沙良 インタビュー 万事快調

——美流紅役の出口夏希さん、岩隈真子役の吉田美月喜さんなど、同世代の方たちとの共演はいかがでしたか?

南さん:二人とはそれぞれ過去に一度、同じ作品に出演したことがあったんですけど、その時はあまりコミュニケーションを取る機会がなくて。こうしてしっかりお芝居をするのは初めてでしたが、不思議と安心感がありました。

夏希ちゃんは想像していたよりも潔くて、可愛らしさも兼ね備えた魅力的な人。美月喜ちゃんはサバサバしているところに親近感を覚えて、すごく話しやすかったです。それぞれに違った面白さがあって、楽しい現場でした。

——現場では、お二人とどんなことを話していましたか?

南さん:終始、中身のない話ばかりしていました(笑)。今日のお昼ご飯はなんだろう?とか、撮影が早く終わったらご飯に行こうとか。撮影が終わってからはプライベートでちょこちょこ一緒にご飯に行っています。

——本作の公式サイトに、『この作品が「どこへも行けない」と感じてしまう私たちに確かな力を与えてくれるものになっていると信じています』という言葉を寄せていた南さん。本作を通じて、南さんご自身が得た発見や芽生えた意識はありましたか?

南さん:私が演じた朴秀美は、行き場のない怒りをずっと抱えている子。閉ざされた空間のなかで「どこへも行けない」と感じてしまうその状況は、環境は違っても私自身にも共通する部分があって……。彼女を演じる中で、その感情を少しずつ自分の中で消化できた感覚がありました。おかげで私自身も少しラクになって、撮影期間は「万事快調!」って言いたくなるくらい楽しかった。この作品を通して、自分の気持ちに向き合うきっかけをもらえました。

映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』

南沙良 映画 万事快調

ラッパーを夢見ながらも、学校にも家にも居場所を見いだせず鬱屈とした日々を送る朴秀美(南沙良)。未来が見えない町で暮らすどん詰まりの日々の中、地元のトラックメーカー佐藤(金子大地)の家で、あるものを手に入れる。そして朴秀美と矢口美流紅(出口夏希)は、岩隈真子(吉田美月喜)や藤木漢(羽村仁成)らを仲間に引き入れ、同好会「オール・グリーンズ」を結成。現状打破の資金調達のために、あるものを栽培する禁断の課外活動を始める。

映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』
公開日:2026年1月16日(金)
原作:波木銅「万事快調〈オール・グリーンズ〉」(文春文庫)
監督・脚本:児山隆
編集:児山隆
出演:南沙良、出口夏希、吉田美月喜、羽村仁成、金子大地、黒崎煌代

撮影/山根悠太郎 ヘア&メイク/竹島健二 スタイリスト/梅田一秀 取材・文/中西彩乃

公開日:

share