登場した瞬間にその場の空気を変えてしまうほどの圧倒的な存在感でディオールのビューティー アンバサダーも務めている俳優・吉沢 亮。今夏に公開され、現在も歴史的なヒットを続けている映画『国宝』では、生涯を賭して芸の美しさをひとすじに追い求め続ける歌舞伎役者役を熱演。一人の表現者としてさらなる高みへと足を踏み入れた彼が様々な葛藤を越え辿り着いた、美に対する想いとその向き合い方とは。

吉沢 亮さんスペシャルインタビュー「今、美について」

1994年2月1日生まれ、東京都出身。2009年に芸能界入りし、2010年の俳優デビュー後は大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)や映画『国宝』(2025年)など、数々の話題作に出演。現在、連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK)に出演中。2021年より、ディオール ビューティー アンバサダーも務めている。

“ありのままでいる”という美学。
綺麗な食事を、きちんと摂る。自身を気遣う大切さに改めて気づいた
容姿を評価していただくのはありがたいですが、若い頃は「自分にはそれしか特徴がないのか」と悩んだ時期も。もっとお芝居を見てほしいという思いから、役柄と関係なく無理に太って抵抗したこともありました。
今はその葛藤もなくなり、“誰かが美しいと感じるならば美しいのだから、しょうがないのだろうな”と思うように。生まれた頃からこの見た目で生きてきて、そこに抗っても意味がない。切り離して考えるのではなく、“ありのままでいる”という感覚が近いのかもしれません。
ここ数年はディオールのビューティー アンバサダーをさせていただいていることもあり、美しくいるための努力もするように。むしろ心も体も健やかであることが一番お芝居がしやすい環境だと気づいたんです。健康体じゃないと気分やテンションにバラつきが出ますし、それによってお芝居も変わってしまう。だからこそ、ちゃんと寝て、水をたくさん飲み、ちゃんとした綺麗な食事を適切な時間に三食摂る。
そして忙しくしすぎず、自分の心が求めるものに従って休むべき時は休む。そうやってエネルギーをチャージすることを大切にしています。
漫画『ONE PIECE』のゾロのような無駄のない美しさに惹かれる
完璧なものと、不完全なもの。どちらに美しさを感じるかと問われたら、僕の場合は前者。不完全なものならではの美しさもありますが、個人的には洗練されて整然としているものに惹かれます。シンプルであればあるほど良く、足し算よりも引き算。
人としての美しさを考えた時に頭に浮かんだのが、漫画『ONE PIECE』に登場する剣士・ゾロ。彼の生活はミニマムな要素で構成されているのですが、それは自分がやるべきことに集中しているから。彼のように自立した無駄のない生き方を見ると、カッコいいなと感じます。
一方で、お芝居に関しては完璧なものよりも不完全だったり予定調和ではないものの方がいい表現を生み出すと信じていて。僕自身、準備はきっちりしていくけれど、現場に入ったら全てを一旦手放して、皆さんと一緒にやりながら生まれるものを大事にしたいと考えています。
事前の準備が多いほどこだわりが強くなってしまうので、重要なのは現場でいかにそれを捨てられるか。これもある意味引き算ですが、準備したものは何かしらの形で生きてくると思っています。

美を追求することは自分を肯定すること
原作がある作品に出る時は、髪型や衣装の調整を何度も重ねます。自分に似合っていないと画面に違和感が生じるので、しっくりくる形を模索してその違和感を消す作業が実は一番大事なんですよね。
それって、メイクにも言えることかもしれません。紹介されているメイク方法を参考にするのはいいけれど、そこから足し算や引き算をして自分に合う形に仕上げることが重要なんじゃないかな。そうやって美容をはじめ、何かを追求することはその人に自信をもたらしてくれると思うんです。
しんどければしんどいほど、やり切った時に自己肯定感が高まるはず。僕も探求すべき課題がある作品に出ることが多く、英語教師を演じている朝ドラの『ばけばけ』では語学の習得が必要に。
『国宝』の歌舞伎に続いて意図的にそういう作品を選んでいるわけではないのですが、僕は役のためにしか頑張れないところがあって。 “これを身につけないと現場に迷惑がかかる”という危機感が自分を駆り立てる原動力になっています。
ただそこに“在る”強さに日本らしい美意識を感じる
映画『国宝』で歌舞伎役者を演じた際は、撮影前に1年半かけて踊りの稽古をしました。とはいえ、歌舞伎は何百年もの時間を通して磨き上げられてきたいわば“究極美”。そんじょそこらの表現では叶わない美しさがあり、当然ながら1年半で辿り着ける領域ではないわけです。
それでも自分が表現し得る限りの美しさを目指そうと思ったら、細部に至るまでとことんこだわりを尽くすしかない。表現に正解はないと言いますが、本当にどこまでも果てしないんですよね。人生を賭けて一つの役柄に挑んだものの、やっぱり正解って見つからないんだな……と、今回改めて感じました。
『国宝』は海外の映画祭でも上映していただいていますが、世界から見た日本って控えめな印象だと思うんです。“もっと前に出なきゃダメだ”と思う人もいるかもしれないけれど、僕はすごくいい部分だと感じていて。
声高に主張はしないけれど、わかる人にはわかる。ただそこに“在る”という強さこそが、日本の美意識に繋がる気がするんです。“本当にいいもの”って表面的ではなく、深く潜る中でじっくりと良さが伝わっていくもの。自分自身もそういった表現を追い求めていきたいです。
MAQUIA 1月号
撮影/Yusuke Miyazaki〈SEPT〉 ヘア&メイク/小林正憲〈SHIMA〉 スタイリスト/荒木大輔 取材・文/真島絵麻里 構成/吉田百合(MAQUIA)
シャツ¥96800、パンツ¥111100/アミ パリス ジャパン オンライン カスタマーサービス(アミ パリス)
コート¥789800、ジャケット¥630300、シャツ¥145200、パンツ¥237600/ゼニア カスタマーサービス(ゼニア)
公開日:






















































































