最近、若い世代にも帯状疱疹になる人が増えています。名前を耳にしたことはあっても、どんな病気なのかよく知らないという人も多いのでは? 帯状疱疹は実は放っておくと怖い病気。そこで、帯状疱疹に詳しい皮膚科医の本田まりこ先生に原因や治療法などについて伺いました。発症したときのために正しい知識をもっておきましょう。

帯状疱疹 原因 治療法 予防接種 ワクチン

お話を伺ったのは……
本田まりこ先生

まりこの皮フ科 院長

本田まりこ先生

神奈川県・鶴見区の「まりこの皮フ科」院長。東京慈恵会医科大学皮膚科客員教授。日本皮膚科学会専門医。アトピー性皮膚炎のほか、帯状疱疹、単純ヘルペスなどのウイルス性皮膚疾患が専門。監修書に『名医が教える! 帯状疱疹 治療大全』(講談社)がある。

帯状疱疹とは? どんな症状?

「帯状疱疹とはその名のとおり、体に帯状の疱疹(水ぶくれ)が広がる病気です。最初は赤いブツブツとした虫刺されのような発疹ができ、その後、水ぶくれになりますが、これらの皮膚症状が現れる数日〜1週間ほど前にピリピリと刺すような痛みが出るのが特徴です。20〜30代などの若い年齢の人は2〜3週間ほどで自然に治ることも多いですが、その一方で悪化のスピードが速いので要注意。発症後4日ほどで水ぶくれが膿(うみ)のたまった膿疱(のうほう)になり、6〜8日目で潰瘍(かいよう)に。このときになってやっと皮膚科を受診する人が多いですが、この段階では皮膚の損傷が激しく、治療をしても痕が残りやすいです。また、顔や頭に症状が出ると合併症を起こしやすく、顔面神経麻痺、難聴、脳炎などになったり、角膜炎を起こして失明する場合もあるので放っておくと危険です。60歳以上の人は帯状疱疹が治った後も神経痛が残りやすいのも特徴です」(本田先生)

帯状疱疹はなぜ起こる? 原因は?

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「帯状疱疹は子どものころに水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス(VZウイルス)に感染し、水ぼうそうになったことがある人が発症します。まれに、水痘ワクチンが原因で帯状疱疹になることもあります。水ぼうそうが治った後もこのウイルスは体内に潜み続けます。特に全身に張り巡らされている感覚神経の根元の部分(神経節)に潜んでいるのが特徴です。そして、加齢や疲れ、ストレス、病気など何らかの原因で免疫力が下がったときにウイルスが再び暴れだし、帯状疱疹になるのです。帯状疱疹ウイルスは神経節で活性化して増殖すると神経に沿って移動しますが、このとき神経細胞を破壊しながら移動するので痛みが生じます。そしてウイルスが皮膚の近くの神経の末端まできたときに皮膚に炎症が起き、発疹が現れます。この間も、神経の炎症に伴う痛みは続きます。1度、帯状疱疹になると水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫がつくので、再発はしにくいと言われていますが、免疫力が落ちたときなどに再発することもあります」(本田先生)

帯状疱疹が出やすい体の部位とは?

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「帯状疱疹は全身のどこにでも現れる可能性はありますが、特に多いのは胸や顔です。顔では特に目の周りや額、鼻などに出やすい傾向があります。ほとんどの場合、体の左右どちらかだけに現れます。そのほかに、腕、お腹、背中、太もも、お尻(仙髄)などに現れることもあります」(本田先生)

帯状疱疹の治療法は? 何科を受診する?

「帯状疱疹は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の服用(重症の場合は点滴)を1週間ほど続けて治療をします。できるだけ早く服用したほうが皮膚症状や痛みが軽くて済むので、なるべく発症から3日(72時間)以内に服用を開始するのがよいと言われています。ただ、それより遅くなっても水ぶくれの時期ならば回復を早める効果があります。また、炎症を抑えるためにステロイド剤を併用することもあります。


抗ウイルス薬を用いると3日目以降から効き始めて、次第に治っていきます。初期に治療をすれば合併症も防げて、痕も残らず治るので、帯状疱疹かなと思ったら早めに受診することが大切。皮膚科のほか最近は内科でも診療可能ですが、皮膚科なら皮膚の処置もできます。痛みがひどいならペインクリニックの受診も選択肢のひとつです」(本田先生)

帯状疱疹を予防する方法は?

「帯状疱疹は疲労やストレスなどによって免疫力が下がることが大きな原因です。ですから、疲労やストレスがたまるような生活習慣をできるだけ避けることが大切です。規則正しい生活、十分な睡眠、栄養バランスのよい食事、適度な運動などを心がけましょう」(本田先生)


帯状疱疹になりやすい人とは?

「帯状疱疹になりやすいのは、年齢で言えば50歳以上で、60〜70代がピークです。男性より女性のほうがなりやすい傾向があります。また、過労気味の人、ストレスが多い人、悪性腫瘍や糖尿病、膠原病など免疫システムに異常を起こすような持病がある人もなりやすいです。そのほか新型コロナウイルスへの感染後や、新型コロナウイルスワクチン接種後は免疫機能が乱れやすく、帯状疱疹になりやすいという報告もあります」(本田先生)

帯状疱疹の予防接種・ワクチンとは?

「帯状疱疹の予防ワクチンには2種類あります。1つは、水ぼうそうの生ワクチン。こちらは帯状疱疹の予防目的なら、発症率が高くなる50歳以上が対象ですが、水ぼうそうにかかったことがない人は、それ以下の年齢でも接種可能です。発症予防効果は50〜60%と言われています。接種は1回で、費用は自費で7000〜9000円程度。ただし、病気や治療など何らかの要因で免疫力が低下している人は接種できません。


また、もうひとつは、帯状疱疹予防専門のシングリックスという不活化ワクチンです。こちらは水ぼうそうの予防効果はありませんが、帯状疱疹を予防する効果は非常に高く、50歳以上を対象にしたデータでは約97%の人が発症を予防できています。こちらも50歳以上が対象ですが、帯状疱疹に罹患するリスクが高い18歳以上でも接種可能です。接種は2回必要で、2回で4〜5万円ほど費用がかかります。どちらのワクチンも自治体などで補助がある場合もあります。接種する場合は医師によく相談してみましょう」(本田先生)

編集部内で集めました【帯状疱疹の体験談】

Aさん(ライター)
「50歳の夏の終わりに。お風呂に入ろうと思って服を脱いだら、右耳の裏から首筋にかけてざらっとした手触りがして赤みが出ていました。前に帯状疱疹の体験談を友人から聞いたことがあったので、まさか帯状疱疹?と思って、その友人に電話をしたところ、72時間以内に薬を飲むと悪化しにくいと聞いたので、朝一番で病院に行き、薬をもらって飲んだら、ことなきを得ました。そのとき仕事が忙しく、無理をしたせいで免疫力が下がっていたんだなと思います」



Bさん(編集者)
「帯状疱疹になったのは30代後半の、編集者として多忙な時期。ある日、腰と脚に神経痛のような痛みを感じたので鍼灸院に行きました。過去に坐骨神経痛が出てブロック注射で治療した経験があったので。でも、鍼灸院に通い続けても痛みは増すばかり。しまいには足を引きずるほど痛くなって、これはいつもと違うと思い、整形外科を受診したところ、帯状疱疹の疑いがあると言われ、内科を受診。そこで足の裏側にポツポツと発疹があるのがわかり、帯状疱疹と診断されました。薬がメインの治療でしたが、結構進行してしまっていたので、まるまる1週間、歩けず、寝たきりの生活。痛みが強過ぎて何も感じないほどでした。その後、治りましたが、それ以来、免疫力を下げないよう気をつけています」



Cさん(編集者)
「2年前の冬に、胸の下に赤いふくらみができ、“ダニかしら?”と思って、寝具の掃除をしてみたけれど、治るどころか赤い発疹が1週間ほどでみるみる広がっていきました。症状が進むと尋常じゃない痛がゆさで、熱も帯び、とにかく衣服がこすれるだけでも耐えられず……。ブラジャーをするのをあきらめて、パッド付きキャミにしたけれど、それでもきつくて、日中は家で半裸状態で仕事していました。1週間後くらいに皮膚科に行ったら、一目みて帯状疱疹だと言われました。皮膚科の先生からは、ストレスや疲れや不摂生が原因で、正しい生活リズムにすると徐々に引くと言われ、飲み薬も処方されました。その後、2週間くらいかけて少しずつ引いていきました。それ以来、早寝、早起きを心がけ、スケジュールも無理なものは無理と割り切るなど、なるべく自分を追い込まない生活をしています。あんな痛さは二度とごめんですから……」

※本経験談は個人の意見です。医師の診断があることの自己申告を元に掲載しております。症状の原因が特定されているわけではありません。

イラスト/Takako 取材・文/和田美穂 構成/足立舞香(MAQUIA ONLINE)

最終更新日:

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