セネッセンス研究の第一人者であるウィーン医科大学とともに、2012年より共同研究を続けてきたシャネル。約10年の研究期間を経てついに、国際的な皮膚科学会ISID2023にて、新知見を発表! 緊急来日を果たしたサイエンティストたちから、肌の未来が変わる?新知見について、美容ジャーナリストの安倍佐和子が貴重な話を伺った。
(写真左から)ウィーン医科大学 皮膚科学科准教授 フローリアン・グルーバー博士、シャネル インターナショナル イノベーション ディベロップメント ヴァイス プレジデント ナタリー・ヴォルプさん、シャネル リサーチ&テクノロジー バイオロジカル リサーチ部門責任者 サンドラ・フォレスティエさん、シャネル ビューティ リサーチ&パフォーマンス ディレクター ユーセフ・バン・カリファさん、ビューティジャーナリスト 安倍佐和子
化粧品会社、出版社勤務を経て独立。先進皮膚科学からホリスティック系まで幅広いジャンルで取材を続ける。
セネッセンス(細胞老化)研究の進化により、肌の未来は大きく変わる!
世界がいま、熱い視線を注ぐ、セネッセンス(細胞老化)研究。もともとは、加齢による病気を防ぐために、医療分野で研究されてきたものだが、老化に関わるすべての要素がセネッセンスと密接につながっていることから、現在では、広い分野での研究が進められています。シャネルが着目したのは、生き生きと健康的な肌を保つための可能性。セネッセンスをコントロールすることで、肌のエイジングの未来は大きく変わる、そう確信したからだという。
「肌の老化プロセス解明のために、皮膚科学の分野でも積極的に研究が続けられています。通常、ひとつの細胞は約50回、分裂を繰り返します。そして分裂が終われば自然に除去されるのですが、中には除去されずに居座ったまま居残る細胞があります。これがゾンビ細胞と呼ばれる老化細胞で、健康な細胞に影響を与え、エイジングを加速させることがわかっています」(サンドラさん)
ゾンビ細胞ですか? 肌のセネッセンスのプロセス、そのメカニズムはどこまで明らかになっているのでしょう。
「あらゆる老化プロセスの鍵を握っているセネッセンスは、発生(1)、増殖(2)、定着(3)の3段階で起こっており、それぞれ、特徴的な兆しと特定のバイオマーカーを持っていることがわかっています。細胞の分裂が止まり、細胞核が変化しはじめるのが(1)。老化細胞が周辺に影響を与えはじめるのが(2)、ドミノ倒しのように老化細胞が増えていきます。(3)は老化細胞が定着し、増加する最終段階。(3)の場合、50%が老化細胞になってしまうこともあるのです」(フローリアン博士)
このプロセスについて、シャネルとウィーン医科大学は長年にわたるパートナーシップによって解明してきました。とくに、老化皮膚モデルの開発に成功したことは、事件と言えるほど革新的なことだったのでは?
「セネッセンス研究の世界的権威であるウィーン医科大学のヨハネス・グリラーリ教授とともに、肌に特化した研究プログラムを2012年からスタート。以来、長期的なパートナーシップを結び、数々の目覚ましい成果をあげてきました。なかでも画期的だったのは、セネッセンスの3段階プロセスを再現する皮膚モデルの開発に成功したことです。このことによって、有用成分の特定など、シャネルの皮膚科学研究は大きな進化を遂げたのです」(ユーセフさん)
有用成分の特定まで可能にしたシャネルのセネッセンス研究。気になるその新知見とは、いったいどんなものなのでしょう。
「新たに解明したのが、セネッセンスの(1)の発生の段階。ケラチノサイト内のセネッセンスを、シャネルのキー成分のひとつレッド カメリア ペタル エキスによって、67%も抑制できたことです。このことを視覚化させたものが下の図になりますが、これは革新的な結果でした」(ユーセフさん)
「世界50カ国以上、皮膚科医や科学者、研究者など、約2500名が一堂に集う、国際会議ISID(国際研究皮膚科学会)において、シャネルはグルーバー博士とともに、セネッセンスのプロセスの可視化と、この有用成分についての研究結果を発表。内外から、たくさんの反響をいただきました!」(ナタリーさん)
レッド カメリア エキスは、シャネルがフランス南西部のゴジャックに所有するオープンスカイ ラボラトリーで有機栽培されるカメリア ジャポニカの一種で、ザ ツァー(皇帝)と呼ばれる稀少なカメリアから抽出されたもの。N°1 ドゥ シャネルを思い浮かべた人も多いのでは? これは、感動的な知見です!
「シャネルは、レッド カメリアをはじめとする植物由来成分を土壌や環境にも配慮し、クリーンでサステナブルに抽出することを心がけています。サイエンスとWell beingは切っても切れない関係にありますから。セネッセンス研究は、ヘルシースキンとWell beingを実現させ、健康長寿といった大きなテーマにも、新たな希望を見出すことができるだろうと考えています」(サンドラさん)
シャネルが取り組むセネッセンス研究の未来には、どんな可能性が待っているのでしょう。
「2026年まで続くウィーン医科大学とのパートナーシップによって、セネッセンス研究を応用したスキンケア時代到来を予感しています。新たに取り組んでいるのが、メラノサイトのセネッセンスと色素沈着の関係。また、都市部の汚染物質や紫外線、ストレスとセネッセンスとの関係なども。じつはホリスティックな視点でも研究されているのが、セネッセンス。ホリスティックビューティを大事にしたいシャネルにとっても、興味深いことです」(ナタリーさん)
想像を超える進化を遂げていた、シャネルのセネッセンス研究。細胞が老化するプロセスやメカニズムは今後、さらに詳しく解き明かされていくはず。カメリアに眠っていた神秘のパワーとの出会いもドラマチック。他の追随を許さないシャネル独自の研究力から、目が離せそうにありません!
撮影/天日恵美子(人物) ヘア&メイク/榛沢麻衣(安倍さん分) 構成・文/安倍佐和子 企画/火箱奈央(MAQUIA編集部)
編集部
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