近年、お尻を鍛えることがブームになっています。お尻のトレーニングというと、プリッと引き上がった美尻を作る目的ばかりが注目されてきましたが、実は、尿漏れや腰痛の改善、疲れにくい体作りなど、健康面でもさまざまな効果が得られるのだとか。そこで、お尻トレーニングの第一人者である、パーソナルトレーナーの岡部友さんに、お尻を鍛えることで得られる健康面でのメリットを教えていただきました。不調改善に効果的なお尻トレーニングもピックアップしてお届けします!

【お尻を鍛えるといいこと10】岡部友先生が教える! 尿漏れ・腰痛・XO脚などを改善して機能的なカラダを作る方法_1

教えていただいたのは…
岡部 友さん

パーソナルトレーナー

岡部 友さん

女性専用フィットネススタジオSPICE UP FITNESS代表。美尻トレーナーとして女性から絶大な支持と信頼を得る。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』をはじめ数多くのメディアで紹介され、今、最も注目度の高いフィットネストレーナー。
外見的なボディメイクに限らず、心の強さと優しさを鍛えることをモットーとする。NSCA-CSCS公認コンディショニングスペシャリスト。ACSM-CRT公認パーソナルトレーナー。分子栄養医学健康指導士。

【お尻を鍛えるといいこと10】

お尻を鍛えることは美尻を作るのはもちろん、不調の改善や、機能的な体作り、老化予防などまで、実は驚くほど効果がいっぱい! 岡部さんに、お尻を鍛える10のメリットを教えていただきました。

お尻を鍛えるといいこと①尿漏れを防ぐ

マキア世代でも増えているのが尿漏れのお悩み。妊娠・出産経験がある人は特に尿漏れしやすいけれど、運動不足でも尿漏れしやすくなるというから要注意。「尿漏れの大きな原因が骨盤底筋の衰えです。骨盤底筋とは子宮や膀胱などの骨盤内臓器を下から支えているハンモック状の筋肉。この筋肉は、妊娠や出産のほか、肥満、便秘、運動不足などが原因で緩んでしまいます。すると尿道を縮める力も弱まり、咳やくしゃみをした瞬間など、ちょっとしたときに尿漏れしやすくなるのです。お尻の筋肉は骨盤底筋と近い位置にあるので、お尻を鍛えると骨盤底筋も鍛えられ、尿漏れの予防・改善につながります」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと②骨盤臓器脱を防ぐ

①でご紹介したように骨盤底筋はさまざまな原因で緩みやすく、これによって骨盤臓器脱も起こってしまうとか。「骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内の臓器の位置が下がり、腟から体の外へと出てきてしまうことです。これも骨盤底筋の緩みが原因で起こります。お尻を鍛えることで骨盤底筋も鍛えられると、骨盤臓器脱を防ぐことができます」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと③腰痛改善

マキア世代でも腰痛に悩んでいる人は少なくないと思うけれど、お尻を鍛えると、実は腰痛も改善しやすくなるそう。「お尻の筋肉が使われずに眠っていると、腰や裏ももなど、ほかの部分の筋肉を使って動くようになるので、その部分の筋肉がオーバーワークになります。特にオーバーワークになりやすいのが腰で、これが腰痛の原因に。お尻を鍛えてちゃんと使えるようにすると、腰に過剰にかかっていた負担が解消するので腰痛が改善しやすくなります」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと④日常が疲れにくく機能的な体になる

ちょっと歩いたり、階段を上ったりするだけでヘトヘトに疲れてしまう……。こんな問題もお尻を鍛えることで改善。「歩いたり、走ったり、階段を上ったりというのは、すべて片足を上げて股関節を動かす動作の連続で、このとき使われるのがお尻の筋肉です。ですからお尻の筋肉がないと、歩く、走る、階段を上るなどすべての動きが大変になってしまい、ちょっと動いただけで疲れてしまうのです。お尻の筋肉を鍛えれば、これらの日常動作が楽にできるようになるので、疲れにくくなり、動きやすい機能的な体になります」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑤XO脚改善

O脚やX脚も、実はお尻の筋肉が弱いことが原因のひとつなのだとか。「お尻の筋肉が弱いと、骨盤や股関節のポジションが悪くなるので、その下の膝のポジションも悪くなります。歩いていても過剰に使われる筋肉と、使われにくい筋肉が出てしまうので脚の筋肉のつき方がアンバランスになって、骨格にも影響が及び、O脚やX脚になるのです。お尻を鍛えれば骨盤や股関節のポジションが正しくなり、O脚やX脚が改善して、脚のラインがきれいになります」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑥姿勢がよくなる

お尻の筋肉が衰えると、姿勢のくずれも招いてしまうそう。「お尻の筋肉が弱いと骨盤が前傾したり、後傾したりと傾いてしまいます。するとその上の背骨も影響を受けてゆがみ、バランスを取るために姿勢がくずれてしまいます。逆に、お尻の筋肉がしっかり鍛えられていれば骨盤が正しいポジションに保たれるので、正しい姿勢が維持できるのです」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑦抗酸化作用が働く

活性酸素は体や肌を老化させる大きな原因となりますが、適度な運動であればかえって抑制効果も。運動全般に言えることですが、体を鍛えると活性酸素に対抗する抗酸化作用が高まるという、うれしい効果が生まれるのです。「トレーニングを続けると、体内でどうしても活性酸素が発生してしまいますが、これに対抗するため、体内でSODやグルタチオンなどといった抗酸化物質が作られます。お尻は大きな筋肉なのでお尻のトレーニングをすると、特に抗酸化物質を作る効果が高まります。適度なお尻のトレーニングも、抗酸化作用を高めるのに役立ち、老化予防になるのです」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑧代謝が上がる

やせやすい体を作るためには代謝を上げることが不可欠ですが、お尻を鍛えると代謝もアップ。「お尻は体の中でも特に大きな筋肉。鍛えて筋肉を増やすと基礎代謝が上がるので、じっとしているだけでも消費されるエネルギーが増えます。そのため、やせやすく太りにくい体になるのです」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑨成長ホルモンの分泌量が増え、若返る

成長ホルモンは子どもが成長するうえで大事なホルモンですが、そのほかに、脂肪組織や筋肉など全身に働いて、代謝を調節したり、筋肉量や身体機能を正常に維持する働きもあるため、大人にとっても重要です。「成長ホルモンは体を回復させて、若々しい体を維持するために不可欠ですが、加齢とともに分泌量は減っていってしまいます。成長ホルモンは眠っている間に分泌されるほか、筋トレをすることでも増えます。大きな筋肉を鍛えるお尻のトレーニングは成長ホルモンの分泌を促す効果が高いのでおすすめなのです」(岡部さん)

お尻を鍛えるといいこと⑩お尻の形がキレイになる

お尻を鍛えると、もちろんお尻の形がよくなることもメリット。「お尻の筋肉が衰えると、どんどん垂れていき、平らで扁平なお尻になってしまいます。でもお尻を鍛えるとキュッと引き上がった、丸みのある立体的な美尻に。後ろ姿が若返りますよ」(岡部さん)

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【岡部友先生直伝! 機能的なカラダを作る尻トレ】

以上から、岡部さんおすすめの尻トレ3種類をご紹介。トレーニングを始める前に、岡部さんにお尻を効果的に鍛えるコツを伺いました。


「お尻まわりに普段から酷使されていて硬くなっている筋肉があると、それが邪魔をしてトレーニングをしてもお尻の筋肉に効きにくくなります。ですからまずは硬くなっている筋肉を緩めたり、ストレッチで伸ばしたりして、お尻を鍛えやすい状態に整えましょう。そのうえで筋トレをすると、お尻が効果的に鍛えられます。自分のお悩みや目的に合ったものを選んで、週に2〜4回ほど行ってみてください。今、気になるお悩みがないという人も、予防のためにやっておくことをおすすめします」(岡部さん)

【尿漏れを防ぐ尻トレ】

〈1〉まずは腹直筋を緩める

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「お腹の表層にある腹直筋が硬いと深部の腹横筋や骨盤底筋が鍛えにくいので、まずは腹直筋を緩めます」(岡部さん)


仰向けに寝て、両手の指先を肋骨の下の際に押し込んで圧をかけたら、さすってほぐします。位置を少しずつ移動させて、1カ所2分ほど行います。硬くなっている部分は痛みがあると思いますが、ほぐれると痛みが弱まってくるのでよくほぐしましょう。終わったら今度はおへその横に両手の指先を当て、同様にほぐします。

〈2〉次に梨状筋を刺激する

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「梨状筋とは、お尻の奥の斜めに走っている筋肉。この筋肉がこり固まっていると骨盤底筋が動かしにくいので、ボールでほぐしましょう」(岡部さん)


仰向けになり、テニスボールなど硬めのボールを片側の大転子(股関節の横あたりの骨の出っ張った部分)の少し後ろのあたりに当て、下側の腕の肘から下を床に置き、上側の手は床に置いて体を支えます。そのまま体を動かしてボールを転がし、よくほぐします。鋭痛がある部分は特に重点的にほぐしましょう。体の角度を変えて2分ほど行って。終わったら反対側も同様に。

テニスボールがない場合は、フェイスタオルで代用可能!

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テニスボールなどの硬めのボールがない場合は、フェイスタオルを2回強めに結び、その部分を当てて行えばOK。

〈3〉グルーツブリッジで鍛える

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最後に、お尻の大臀筋と骨盤底筋を同時に鍛えます。仰向けに寝て、両膝を立て、足を肩幅程度に開き、膝は内側に入れます。膣をキュッと締め、かかとで床を押してお尻を引き上げます。このとき、お腹とお尻を締めましょう。腰が反らないように注意。2秒で引き上げ、2秒で下ろします。これを20回。呼吸は止めずに吐きながら行いましょう!

【腰痛を改善する尻トレ】

〈1〉まずはハムストリングスをストレッチ

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「腰痛を改善するには、お尻の筋肉と、背骨に沿って走るインナーマッスルの多裂筋を鍛えることがポイント。これらの筋肉が使われやすくするために、まずは硬くなっている裏もものハムストリングスを伸ばすストレッチをしましょう」(岡部さん)


仰向けに寝て、片方の膝を立て、もう一方の脚をまっすぐ上に伸ばし、足裏にフェイスタオルをひっかけて両手でタオルの端を持ちます。そのままタオルを手前に引き寄せて、上げた脚の裏ももを伸ばし、呼吸を止めずに20秒キープ。反対側も同様に。左右各1回。

〈2〉次によつんばいキックバックで鍛える

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次に行うのが、お尻の筋肉と背中の多裂筋を鍛えられる筋トレ。よつんばいになり、両手は肩の真下に置き、脇は締め、背中は反ったり丸めたりせずまっすぐにします。次に片方の脚を上げて伸ばします。この脚の上げ下ろしをリズミカルに15回。反対側も同様に。体重が右や左に寄らないよう、体をまっすぐに保ったまま行いましょう。

【歩いても、階段の上り下りをしても疲れないカラダになれる尻トレ】

〈1〉まずは前ももを緩める

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お尻の筋肉が弱い人は、普段、前ももの筋肉を使って歩いたり、階段の上り下りをしているため、前ももの筋肉がオーバーワークで硬くなっているので、まずはここを緩めることがポイント。


うつ伏せになって、肘下を床につけて体を支えて起こし、テニスボールなどの硬めのボールを片方の前ももに当てます。同じ側の膝を曲げ、前後に体を動かしてボールを転がし、前ももをほぐします。前もも全体をほぐし、硬いところは重点的にほぐしましょう。反対側も同様に行って。

〈2〉次にブルガリアンスクワットで鍛える

【お尻を鍛えるといいこと10】岡部友先生が教える! 尿漏れ・腰痛・XO脚などを改善して機能的なカラダを作る方法_10

前ももを緩めたら、次にお尻の筋肉を鍛えます。


1.30cmほどの高さの台を用意します。家にあるものならベッドなどがちょうどいい高さ。その台の前に立ち、片足を台にのせます。両手は胸の前で合わせましょう。

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2.次に、そのまま膝を曲げて体を沈めます。後ろ側の脚の膝が床につくくらいまで体を沈めるのが理想的。次に、上体を前に倒しながら、お尻を持ち上げるようにして立ち上がって元のポーズに戻ります。このとき、お尻の力を使って立ち上がるのがポイント。体がグラつかないように保って行いましょう。これを10回。終わったら反対側の足を台にのせて同様に行いましょう。

<Information>

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岡部友さんが代表を務めるフィットネススタジオがSPICE UP FITNESS。トレーニングを通して心身を鍛え、心と身体の自立を女性に提供。仕事、結婚、妊娠、子育て、老後と、女性のライフステージに合わせてすべての女性が楽しく効果的に続けられるトレーニングと食事管理を指導。

撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/藤本 希 取材・文/和田美穂 企画・構成/足立舞香(MAQUIA ONLINE) 衣装/すべて本人私物

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