単にヘリテージの展示にとどまらない、この上なくドラマティックで圧巻の回顧展。メゾンの物語を紡ぐ、壮麗な世界に没入できる素晴らしい展示の全貌をお届けします。

1947年の初コレクションで発表された、「コロール(花冠)」ラインの「バー」スーツ(左側)がまずお出迎え。女性らしさが際立つフォルムはディオールならでは。
それはサプライズに満ちた
極上のエンターテインメント
パリに始まり、世界各国で成功を収めた「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展。昨年12月に東京都現代美術館で開幕して以来、SNSにも熱いコメントが溢れ、大きな感動を呼んでいる。今回の回顧展が初公開のものも多く、そこにはメゾン誕生当時から現在までのオートクチュール作品や、貴重なヘリテージの数々が一堂に。多彩なテーマに沿ったエリアごとに、アーティスティックな演出を凝らした空間が広がるため、一歩足を踏み入れる度にワクワクが止まらない。
特にディオールと日本の強い絆にスポットを当てたエリアは、今回の展示の核となるもの。また若き日のイヴ・サン=ローランをはじめ、錚々たる顔ぶれがクリエイティブ ディレクターを務めてきただけに、ディオールのスタイルを継承しつつ、それぞれの個性を活かしてどう表現してきたのか、見比べられるのも楽しみのひとつ。いつもサプライズをもたらすディオールならではの、まさに夢のような世界を余すところなく体感してほしい。

メゾンの後継者たちがそれぞれに取り入れてきた日本の美意識。写真はジョン・ガリアーノの作品。

吹き抜けの大空間を、星空に浮かぶかのようにソワレが埋め尽くす「ディオールの夜会」。

©️YURIKO TAKAGI
回顧展のために写真家・高木由利子氏が撮り下ろした、抒情的でエモーショナルな写真も要注目。
女性、花、日本。歩みを進めるごとに
クリスチャン・ディオールが愛したものたちに、
時空を超えて包まれる多幸感がありました。
「人間や自然へのリスペクトと温かさが脈々と受け継がれ……時代を彩るモードはときにクールに感じられるけれど、広大な空間に満ちていたのは、紛れもなく「愛」でした。」

クリスチャン・ディオールと、その歴代の後継者の作品をクリエイティブ ディレクター別に展示。写真はジョン・ガリアーノのもの。

オートクチュールのアトリエで、本物の生地を用いる前に作られる試作「トワル」。白の世界が幻想的。

世界各国の文化を称え、想を得たコレクション。

ミニチュアのドレスやアクセサリー、シューズなどがカラフルでワクワクするような世界を構成。

「STARS IN DIOR」にはグレース・ケリーやダイアナ妃をはじめ、マリリン・モンローなどのハリウッド セレブが纏ったドレスも。
花々への情熱を閉じ込めた
アイコン フレグランスにも注目
愛を香らせ、幸せに。
タイムレスな魅力を放つミス ディオール
女性たちに夢と希望を
もたらすために誕生
1947年、初のコレクション会場を、発表するドレスをより完璧にするために、初めての香水「ミス ディオール」で満たしたクリスチャン・ディオール。そのジャスミンやローズの香りは、エレガントな「ニュールック」とともに、大戦後の暗い時代を生きる女性たちに夢や希望、そして笑顔を取り戻させた。「愛のように香る香水を」と誕生したという「ミス ディオール」。その香りはいつの時代も女性たちを愛で満たし、幸福に導く。展覧会では、「ディオールの庭」のエリアがまさにその世界を具現化。さらに「ミス ディオール」に関わる貴重なコレクションの数々も、見ることができる。

ミス ディオール
ブルーミング ブーケ
ミス ディオールのラインの中で、もっともフレッシュなフローラルの香り。愛の煌めきと喜びを語るように。みずみずしいベルガモットで幕を開け、ピオニーとローズがいきいきと優しく包み込んで、愛の煌めきと喜びを語り始める。ジャカード織のリボンが結ばれ、装いを一新。100ml ¥19250/パルファン・クリスチャン・ディオール

イタリア人アーティスト、ピエトロ・ルッフォとのコラボレーションによる、ミス ディオール限定モデルのバニティとボトル。

誕生当時のボトルはアンフォラ(古代ギリシャの壺)型。リボンと千鳥格子が特徴的なボトルは1949年に誕生。

まさにミス ディオールの世界が広がる「ディオールの庭」のエリアには、ナタリー・ポートマンが広告で着ていた歴代のドレスも。写真は2017年、マリア・グラツィア・キウリのデザインによるもの。
絶対的なフェミニニティを
讃える香り、ジャドール
すべてがプレシャス!
センシュアルで優美に
「花は女性の次に美しい神の創造物」と語り、花をこよなく愛していたクリスチャン・ディオール。ディオールのもうひとつのアイコン フレグランスである「ジャドール」の香りは、この世でもっとも美しい極上の花々を束ねたような、女性らしさに捧げる賛歌。ローズ、ジャスミン、イランイラン……、最高品質の花々がハーモニーを奏でるそのノートも、丸みを帯びた曲線を描き、ゴールドジュエリーを纏ったかのようなアンフォラも、すべてが神々しいまでに眩く、官能的に。今回の展示では、「ジャドール」の輝かしい軌跡をあらためて辿れるほか、この香りにインスパイアされた、贅を尽くしたドレスも見逃せない。

ジャドール パルファン ドー
昨年、一大センセーションを巻き起こした、花々と水から生まれたアルコールフリーのパルファン。紛れもなくジャドールの香りでありながら、革新的なフォーミュラにより花々のナチュラルな魅力を際立たせ、みずみずしく軽やかで、かつ豊かに。まるで肌そのものが香り立つよう。50ml ¥14740/パルファン・クリスチャン・ディオール

著名なアーティストがデザインした、美しい特別モデルのアンフォラも多数。中央は、繊細なチェーンをあしらったバカラクリスタルの特別モデル。
繊細なドレスの刺繍から優美な
フレグランスのボトルまで、美を追求する
ディオールの真髄が間近に見られるなんて。
まさにうっとりするような眼福の時間!

展覧会詳細はこちら
クリスチャン・ディオールが想を得た芸術や、彼の庭園への愛、舞踏会の魔法、クリエイションに影響を与えた日本の文化などへの、75年超に及ぶメゾンの情熱を余すところなく紹介。
■会期:2023年5月28日(日)まで
■会場:東京都現代美術館
■開館時間:10:00~18:00
■休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)
「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展示風景(2022年)東京都現代美術館
取材・文/巽 香 構成/火箱奈央(MAQUIA)
※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。
公開日:

















































































