若い年代でも、そして閉経後の高齢者もかかる人が増えている乳がん。


早期発見にはやはり乳がん検診が大切と言われます。でも、実際にはどうすればいいのでしょう? 乳腺の専門医で乳がんの知識や検診の普及に長年尽力している「ピンクリボンブレストケアクリニック表参道」院長、島田菜穂子先生が答えてくれます。


--乳がん検診40代になったらやればいいと聞きましたが?


「いえいえ。20代でも30代でも受けてほしい人がいます。先に述べたように家族歴や女性ホルモン剤の使用歴など、ひとりひとり乳がんのリスクは違うのですから、必要な検査もひとりずつ違うんです。ピンクリボンキャンペーンの認知度が高くなり、乳がん検診受診率も上がったといわれますが、実はまだ30数%。受ける人の数はあまりにも少ないのが現実。諸外国に比べると、日本の乳がん検診受診率がいかに低いかがわかります」


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島田先生が提案するガイドラインは…

▼20代でも検診を受けてほしい人

・家族、兄弟姉妹、伯父叔母、いとこなど2名以上が特に閉経前に乳がんや卵巣がんにかかったことがある人

・家族歴はなくてもピルを長期間使用したことがある人

・家族歴はなくても長期にわたって不妊治療をした人

(家族に遺伝性がんの人がいる場合、20代でも半年~1年に一度は、医師による視触診や適切な画像診断を受けることをおすすめ)


▼30代半ばで検診を受けてほしい人

・女性全員

(発見される乳がんの大きさの平均は2cm前後のしこり。2cmになるまでには約10年。そして現在もっとも乳がん発症が判明する年代は40代半ば、ということからすると、30代半ばでがん細胞が発生する人が多くいるということ。30代半ばから定期的な検診を受けることをおすすめ)



【次のページもチェック!】乳がん検診の内容は?



--乳がん検診は、どこに行けば受けられますか?


「婦人科だと思う方も多いですが、乳房の病気ですから専門は乳腺科です。大きな病院なら乳腺外来などの専門外来で検診をしているところもありますが、治療を行う専門の医療機関は、症状がない人の検診は受け入れていない場合もあります。あらかじめ受診する前にその医療機関で“乳がん検診”を受けているか確認してから受診しましょう。最近では乳腺専門のクリニックや検診センターなども少しづつ増えてきたので、大きな病院に行くのはなんだか敷居が高いという方は乳腺専門クリニックを目指すのもお勧めです」


「専門医のいる乳腺外来や乳腺科などで検診を受け、乳がん検診は、前回の画像と比べてわずかな異常を見つけ出す精度の高い検診を受けるためにも、あなたの正常の乳房の状態を知っている乳房のかかりつけ医=ブレストケアドクターを見つけておくと、早い段階の異常が見つかるだけでなく、いざ治療が必要という時も安心です」


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--乳がん検診は具体的にどんなことをするのですか?


「医師が乳房の状態を観察して触診することを視触診と呼びますが、乳房の状態を正しくするには、視触診だけで診断はできず、マンモグラフィや超音波などの画像検査が欠かせません。私のクリニックの乳がん検診では、患者様のリスクや年齢、家族歴、前回の結果を検討し、問診、視触診、マンモグラフィ検査、超音波検査、MRI検査などを、その人に必要な検査の組み合わせをアドバイスして行います」


「そして検診が終わると、検診の結果報告書や結果をお話をする診察の時に、必ず次回の検診の時期や必要な検査の組み合わせについて、お勧めの内容をお知らせします。たとえば、不妊治療中のなどには検診の間隔を短くしたり、どのような症状があったら早目に受診する必要があるかなど、です。一人一人に必要な検診はそれぞれ違うから、必要な検査と不必要な検査を吟味して、その方にあった効果の高い検診プランを組むのです」


【マンモグラフィ検査】

乳房のX線検査のこと。小さながん、石灰化のある乳がんの発見に適しています。検査の精度は約80~90%。乳房をプラスチックの板ではさんで平らにして撮影するため、多少の痛みがあります。また、乳腺密度が高い人や若い人の場合は、画像に写りにくいのも特徴。


*X線による放射線の被曝を心配する声もありますが、その量は東京〜サンフランシスコ間を飛行機で移動した際、自然に浴びる放射線量と同程度。適切な設備と撮影方法、頻度で行えば、健康に重大な影響を及ぼすことはないことがわかっています。



【超音波(エコー)検査】

超音波を当てて乳房の病変を検査する方法。医師の触診では発見できない小さいしこり、しこりの良性・悪性の診断に用いられています。乳腺密度が高く(高濃度乳腺)マンモグラフィではわかりにくい場合も、超音波検査なら判別が可能。放射線被曝がないので、妊娠中の方も検査できます。


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*左は超音波(エコー)、右はマンモグラフィの撮影画像です。



【次のページもチェック!】検診はマンモグラフィだけでいいの?

-- 2年に1回にマンモグラフィを受ければいいと聞いたことがありますが? 超音波(エコー)はしなくてもいいの?


「初 めての検診はマンモグラフィも超音波も、両方受けてほしいです。どちらにせよ、家族歴やリスクなども見直してみると、次にいつどんな検査が必要かがわかっ てくると思うので。2回目からは、ご自分のコンディションやリスクに応じて、無駄のないよう検査を絞って必要な検査をお知らせしています」


「ま た、自分で気にかかる症状がある場合は、乳がん検診ではなく、診察に“受診”するのが正解。混同されがちですが、自分で異常を感じていない時に行う、異常 があるか無いかを探すための診察が検診(日本では自費診療)そして、しこりを感じるなど何か自覚症状があるときにその症状の原因を探るための診察と必要な 治療をするのが診察(保険診療)です。どちらかに間違って行ってしまうと、最悪の場合は病気が発見できなかったり治療が遅れたりすることも・・・。自分が どちらなのかわからない場合は、最近は検診も診療も行っている乳腺専門クリニックなどもあるので、まずは連絡して相談してみることもお勧めです」



島田菜穂子 先生

ピ ンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長。乳がん認定医、放射線科専門医、認定産業医、日本体育協会認定スポーツドクター。2000年、乳がん啓発団体「乳房健康研究会」を発足させ、乳がん 啓発団体として日本初のNPO法人認証を受ける。同副理事長。乳がん関連の著書、監修が多数あり、最近の監修は「乳がんから自分をまもるために、知ってお きたいこと。」(日本医療企画)。

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 http://www.pinkribbon-breastcare.com

撮影/河野敦樹 取材・文/蓮見則子



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