役者の仕事をしていると、自然体でいることって実はすごく難しいんです。本当にリラックスして脱力できるのは、一人で家にいる時くらいかもしれません。気を張っていると身体にも力が入るのか、知らないうちに肩が上がっていることが多かったんですよね。歯も無意識に食いしばっていて、気づくと顎が疲れていた……なんてこともしょっちゅう。やっぱり役のことを常に考え続けているせいか、私自身が“本当の自分”がどんな状態か知ることをせず、自分を置いてけぼりにしがちだったんだなって。それに気づいてからは、もっと心と身体に向き合わないといけないと思うように。身体のことを勉強しながら、自分を緩める方法を少しずつ学んでいったんです。そういった時間を意識的に作るようにしたことで、海外でダイビングをしている時にしか得られなかったリラックスした感覚が徐々に得られるようになってきて……。余分な力が抜けたのか、頭痛も起こりにくくなって気持ちもゆったりと穏やかに。今は心も身体も凝りがほぐれて、いい状態をキープできている気がします。

不調を感じることは、昔から度々ありました。撮影に入ってしまうと3食お弁当の日々が何カ月も続くし、微熱がしばらく下がらないような時期もあって。そういう“なんか変だな”って感じることを、たいしたことではないと流してしまっていたんです。そこをきちんと見直そうと思ったのが、ドラマ『大恋愛』を終えた頃。30代を迎えたこともあってあちこち調べてみたら、いろいろなものが溜まりやすい体質だと判明。とにかく解毒をしながら補給していく必要があるとわかり、今はトライアンドエラーを繰り返しながら自分に合う方法を探している最中。ただ、中医学やフィトセラピーなどいろんな学問を学んでいくと、結局は同じところにたどり着くんです。つまりは生活習慣を変えることが一番大切なんだなって実感しました。

食生活に関しては、年々マニアックになっている気が。最近は体質的に鶏肉と葉ものが自分に合うとわかり、積極的に摂るようになりました。さらに今注目しているのが、鶏ガラを炊き込んで抽出した“ボーンブロス”。アミノ酸等の栄養素が豊富で腸内環境を整えてくれるから、筋肉や内臓のケアとして摂取するようにしています。あとは、血糖値のコントロールも重要な要素。血糖値の乱高下が血液のドロドロや精神的なイライラに繋がるので、食材選びや食べ方はかなり気をつけています。そして食生活を見直した結果、マインドにも変化が。血糖値が安定していると感情も落ち着きますし、急な眠気や火照りを感じた時に“あれを食べたことでこういう反応が出た”と見直しやすくなったことも大きくて。不調の原因が目に見えるものに紐付けられるようになれば、自分で調整ができる。そのおかげで多少の揺らぎでは動じなくなり、気持ちのコントロールもしやすくなりました。

自身を整える上で重要なのは、とにかく無理をしないこと。そして何より、自分を大切にすることを忘れてはいけないと思うんです。誰かのコップに水を注ぐ前に、まずは自分のコップを満たしてあげてほしい。人に与え続けて、自分が枯れちゃってる人がすごく多い気がするんですよね。もてなしの心は美徳ではあるけれど、それで自分がだめになってしまったら元も子もないじゃないですか。“今日は肩が凝ってるな”とか、小さな変化を見逃さずにちゃんとケアしてあげる。それが心と身体に栄養を届ける一番の方法なんですよね。

今のような状況は、不安な気持ちを招きやすいですよね。ただ、目に見えないものに対する恐怖心って、調べることや知識を得ることで対処できる部分もあると思うんです。私自身が栄養学や中医学の勉強を続けるのは、そうやってきちんと向き合っていくことで身体が答えを返してくれると感じているから。身体に限らず、それ以外の不安に関しても同じこと。自分が何に恐れているのかを見つけ出し、何を用意すべきかという対処法を学ぶことでどんな時も冷静でいられる強さが手に入るんじゃないかな。そのためには自分に必要かつ正しい情報を選択することがすごく大事になっていくと思います。

今まではひたすら頑張ることが求められる社会だったけれど、最近は“その頑張り方は違うんじゃない？”っていう声が挙がってきて、時代が変わってきているんだなって感じます。私自身はありがたいことにこうして発信できる場があるので、“頑張り方を変えて、自分を大切にしよう”っていうメッセージを積極的に伝えていきたいと思っています。