俳優として、映画監督として活躍する斎藤工さん。今年の8月で41歳の誕生日を迎える。キャリアとしての脂はたっぷりと乗っているけれど、実際の本人は脂気のない爽やかさに包まれている。澄んだ瞳が見つめる先を、追いかけてみた。

斎藤工 インタビュー

腸もクリエイティブも、全ては直結している
極める男、斎藤 工の今

斎藤 工

さいとう たくみ

斎藤 工

1981年8月22日生まれ、東京都出身。主演作ドラマ『漂着者』、映画『シン・ウルトラマン』などに出演するほか、映画『blank13』、『ゾッキ』などを監督。秋には映画『グッバイ・クルエル・ワールド』、2023年には窪田正孝を主演に迎えた監督作『スイート・マイホーム』の公開が控える。

斎藤 工を表すキーワード「エンターテイメント」

プレイヤー兼クリエイターとして、エンターテイメントを愛する人間として本気で考える、誰も犠牲にしない未来。

いびつながらも 自分のカタチというものが見えてきた

斎藤 工さん-1

子供を産み育てることを
男性の側から本気で考えた
Netflixで配信中のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』では、子供を身ごもるエリートサラリーマンを演じ、大きな話題に。
「企画をいただいた時はめちゃめちゃ面白そうだと思いました。映像業界を含め、明らかに時代が変わるべきタイミング。キャリアを積みながら子供を産み育てることを男性の側から本気で考えたこのドラマが、“女性ならでは”と目をつむってきた事柄に光を当てるきっかけになればと思います」
今回のドラマはもちろん、実は4年ほど前から斎藤さんは、自身が関わる撮影現場に託児所を導入する活動をしている。
「妊娠、出産、育児をするタイミングは、女性が社会から離れざるを得ません。多くの才能を失っていることを如実に感じる中で、乖離している社会性と育児を直結させられるのは託児所の存在ではないかと考えたんです。僕がいい人に映ったり、活動が特別なことのように取り上げられるのは意図と違う。当たり前のこととして浸透していく世の中になればと願っています」

斎藤 工さん-2

自分の形をなるべく
円に近づけていきたい
映画館のない地域に劇場体験を届ける移動映画館「cinéma bird」や、ミニシアターを支援する「Mini Theater Park」などにも力を入れている斎藤さん。出産や育児にまつわる作品に関わったことで、エンターテイメントのさらなる課題が目についた。
「非日常の空間で好きな作品を見てバイオリズムを整えることが映画館の責務なのに、育児に365日向き合っているお父さんお母さんたちにとっては一番遠い存在になっている。やっぱり劇場にも託児所が必要だと感じました。人が映画館から遠のいていることを嘆くだけじゃなく、必要な人に届けるにはどうすればいいか。循環的な娯楽のシステムを生み出していきたいです」
その考えは、足りないものを補う微生物の世界とも、やっぱり通じている。
「いびつながらも、約40年かけて自分の形みたいなものは見えてきたところ。微生物の力を借りてなるべく円に近づけたいし、僕を含めた人間が作るネットワークも、被害者を作らない社会構造にしたい。これは個人の思いではなく、確実に実現しなければいけないことだと考えています」

Netflixシリーズ ヒヤマケンタロウの妊娠

Netflixシリーズ
ヒヤマケンタロウの妊娠
男性もみな妊娠するようになった世界を舞台に、予期せぬ妊娠をした広告マンの桧山健太郎(斎藤 工)が、パートナーの亜季(上野樹里)と共にこれまで気づかなかった社会のさまざまな問題に直面するコメディ。●Netflixにて全世界独占配信中

MAQUIA8月号
撮影/神戸健太郎 ヘア&メイク/くどうあき スタイリスト/倉田 強 取材・文/松山 梢 構成/火箱奈央(MAQUIA)

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